『撤退田圃』  
 
 
  秀英は大学を卒業し大手量販店に勤めたあと、父親の後を継ぎ13代目の稲作農家を継ぐために就農した。秀英は国の農業政策を積極的に活用し、コストダウンの実現のために、ひたすら、農地を集積し規模拡大を目指し、就農後12年で、地元の山形県で65ha、茨城県で18haの水田農場を経営し、農協には出荷せず大手量販店に直売していた。
しかし、生産調整の廃止、TPPの合意などにより、コメの価格は大きく下落していった。


 ―ビジネス的には、わが社は、君の農業法人に40%出資しているだけで、契約書にもあるように購入価格は毎年相談となっている。1俵8500円が飲めなければ、君のところからコメは買わない ―
ロイズのコメ仕入担当者は冷たく言った。

秀英は、5年間育てたライスランド茨城を大手量販店ロイズに300万で売却し、コメ生産から撤退し地元に戻っていった。
 
 
 
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