2023年9月23日(土)

 9月23日(土)
 The Lodge at Broadwayのベットで目が覚めた。薬が効いたのか熱はないようだが、ベットと枕の調子が悪くよく眠れなかった。
 9時少し前にホテルをでて、ホテルから5分程度のところにあるツーリストインフォメーションに行った。午前中はBroadwayの街を観光し、午後からタクシーを頼み、近郊の街を見ながら、夕方モートン・イン・マーシュ駅に行く計画を立てていたからだ。インフォーメーションセンターの女性にこの計画を話し相談した。女性は、「ok、私の友人の知り合いに良い人がいるので、聞いてあげる」と言って、友人に連絡し、彼女の友人のタクシー運転手の電話番号を聞いてくれた。早速、連絡してみたが、今日は都合がつかないとのこと、それをインフォーメーションセンターの女性に伝えたら、しばらく考え、壁に貼ってあるタクシー会社の電話番号に、「今、センターにジェントルマンが来ていて、午後からタクシーを頼みたいのだけど・・・・・」と、電話してくれた。電話のやり取りと彼女の表情から予約がとれないらしい。彼女は、次のタクシー、その次のタクシーと電話してくれるのだが、いずれもNOらしいのだ。週末は、タクシーの人も休暇をとるのかは分からなかったが、タクシーは少ないらしい。
 3件目がダメだと分かった時に、僕は彼女に、「タクシーがないようなので、あなたに、これ以上、タクシー会社に連絡してもらうのは心苦しいから、バスでモートン・イン・マーシュ駅に行くことにする。何時のバスがある?」と聞いたら、彼女は申し訳なさそうな顔をして、「14:05のバスがある」と教えてくれた。
 「バス停はBroadway The Lygon Armsだよね」と言うと、大きくうなずいた。
 時計をみると5時間近くあるので、これなら、ゆっくりとBroadwayの街を散策できると気持ちを切り替えた。ホテルに戻り、カフェで買ったパンとコーヒーで簡単な朝食をして町にでた。
 最初に入ったのは、ホテルの近くの土産物だった。店をゆっくりと回っていたら、入り口近くのブックコーナーが目についた。そこの棚にイギリス人 John Lewis-Stempelの「The Wild Life of the FOX」という本があったので、その本を手に取り、はしがきに目を通すと、自然派のエッセーストで賞をとっていると書いてあり、先日、行った湖水地方の風景にピッタリだと思い、買うことにしてレジでお金を払った。その時、レジの女性が、「この本はGoodです。良い本を買いましたね」と言ってくれた。

 <旅先では何気ない一言に妙に感動する時がある>

 今回のこの言葉がまさにそうだった。
 
 良い気持ちにしてくれたお店の女性に感謝しながら土産物を出て、Broadwayの博物館に向かった。Broadwayは、昔からの交通の要で宿場町だったと館長らしき人が説明してくれた。
 この町は、中世から重要な交通の要で、1800年代には馬と馬車の集積所だったらしい。旅人はこのBroadwayで馬車を乗り換えていたらしい。その名残が博物館前の建物にあった。House & Houndという、日本風に言うと馬や馬車をもっている本陣らしきものが、この町にはいくつもあったらしい。さらに、1900年代は、Edwin Austin Abbey、Alfred Parsons、Henry Jamesなどの多くの絵描きや作家が集まりコロニーを作っていたとの事だった。 

   
  (Broadwayの博物館)  (House & Hound)  
 
 「なぜ、多くの作家たちが、この街に集まったのですか?」と聞くと、館長は、「滞在費がやすかったのと、風景や気候が彼らにとって創作意欲を高めたらしい」と教えてくれた。
 
 僕は信州追分の四季派たちの作家を思い出した。信濃追分も江戸時代は、本陣、脇本陣があった宿場町で、飯盛り女や女郎などがいたのだが、昭和の初めに堀辰雄や室生犀星や立原道造などの作家が集まり、立原道造が構想した追分コロニーの模型が残っている。僕は、追分に小さな山荘があるので、毎夏、このムラを訪ねている。そのためか、このBroadwayと言うコッツウォルズの町が急に近くに思えてきた。1時間30分ほど博物館を見学したが、博物館の3階からみた中庭がとても美しかった。
 
 館長に挨拶をして博物館を出てBroadwayのメインストリートをランチができそうな店を探しながらブラついた。土曜日なので、どの店も混んでいたが、ようやく、Russell’s of Broadwayホテルのレストランに入ることができた。ランチメニューのホウレンソウのスープとポークソテーのランチを注文したが、久しぶりにうまかった。
 
  (博物館から見た中庭) (Russell’s of Broadwayのホウレンソウスープ)  
 
 14:05のバスでモートン・イン・マーシュ駅に戻った。駅に着くと、駅には駅員らしき人は誰もいない、イギリスの地方の駅には駅員がいないらしい、ホームを見ると、ロンドン行のホームに乗客と思われる人がいたから、列車が到着するとかってに乗るらしい。確認のために、待っている乗客らしい人に、「次の列車はロンドンに行くのか」と聞いたら、無愛想に「そうだ」と教えてくれた。15時時少し前の列車に乗った。
 予約していたのはこの2本後だったが、タクシーがなかったので、予定を早め自由席と思われる車両に乗り、パディントン駅に戻った。

(パディントン駅:モートン・イン・マーシュ駅から乗った列車)
 
 今夜の宿泊先のRoyal Eagle Hotelにチェクインしたが、フロントのインド人らしい男が、デポジット50ポンドを要求した。Booking.comからの予約だから、宿泊代は、すでに、Booking.comから支払われているので、お前の話はおかしい、デポジットなど払う必要はないと演説をぶってやった。日本人だと思い足元を見たとしか思えない。その腹いせなのか、そのインド人は108号室と少しわかりにくい部屋の鍵をくれた。
 
 とにかく、ロンドンでは、CIA、特にインド系とアラブ系が多く、典型的なイギリス紳士はほとんど見ない、来る前に想像していたイギリスの雰囲気がしないのだ。そのうえ、空気も淀んでいて、町全体の雰囲気自体が美しくない。建物も地下鉄も古く、そのインフラを修理し使っているものだから人にとって優しい構造にはなっていないのだ。僕は、ここに、イギリスの国としての衰退を見た気がした。この風景は、近未来の日本なのかも知れない。
 
 
 
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