| その1 北海道 帯広・富良野 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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今回から、「林に棲む」のコラムを、酒と食を中心とした『酒放浪記』の形で新たに書きだすことにした。というのは、私は全国の農村や酒蔵を訪ねることが多い。地元の友人たちと地元の居酒屋に出かけ、旧交をあたためながら一献やるのが人生の楽しみの一つになっている。そう言った店の中には美味しい店や楽しい店が沢山あったが、残念ながらこれらの店は私の頭の中にしか存在していない。そこで、これまでに訪ねた、あるいは、今後、訪ねるであろう居酒屋を記録に残そうと一念発起したわけだ。 第1回目は、最近行った北海道の帯広、富良野から始めることにする。11月中旬に富良野で仕事があったので、仕事の前に帯広に行き十勝の友人たちと酒を酌み交わすことにした。 11/15(土) 羽田発11:50発のANA4765で帯広に13:20に着いた。空港から帯広に向かうバスは混んでいたが、偶然、私の隣に美しい中年の女性が座った。バスが出発し暫くした時に、私は「帯広駅までですか」と聞くと、その女性は「いいえ、帯広競馬場です」と答えた。帯広競馬場は「ばんえい競場」で有名で、確か、土曜日は開催されている。私はこの女性と「ばんえい競馬」の組み合わせはどう考えても不釣合だと思ったので、「ばんえい競馬ですか?」と聞くとその女性は頷いた。私は「ばんえい競馬、どこが魅力的なのですか?」と聞いてしまったのだった。私は声を出したと同時に「しまった」とおもったが、その女性は、私を見て「ニコッ」と笑い目を閉じてしまった。旅人には理由などいらないのだ。
帯広コンフォートホテルにチェックインし16:15にホテルのロビーでKとYに会った。本日の案内人はKである。Kはまず、ホテル近くの平和園という焼肉屋に行く。この店は昭和33年創業の帯広の老舗焼肉屋なのだ。店に入ると先客がいた。さすが人気店だ。まだ、16:30なのに混んでいて3組目だと言う。15分くらい待って1階の座敷席へと案内された。Kは「上さがり」と「上ジンギスカン」と「上ミノ(特上ミノは売れきれとの事だった)」を注文した。ここのミノは乳牛のミノで、乳牛は牧草を食べているから柔らかいのが特徴だ。生ビールで再会を祝い乾杯、頃合いに焼けた3種類を口にいれた。美味い、おまけに安い。この味とこの価格だから店は超人気店なのだと確信した。
2件目はKのお勧めの寿司屋に行く予定だったが満員ではいれず、帯広名物の屋台村に向かった。屋台村にはうまい店とそうでない店が混在しているらしい。Kはあるおでん屋に顔を出したが、ここも、満員ではいれず、最終的に、炉端焼きの函館赤ちょうちんに入った。この店は、昭和49年創業で、なぜか帯広にあるのに函館なのだ。Kの話によれば、この店の創業者の父親が函館出身とかで函館赤ちょうちんとしたらしい。なぜKがこの店を詳しいかといえば、Kの子供の同級生が店長をやっているからだ。この店で提供する干し魚は炉端カウンターにつるし、干しているとの事だった。日本酒の燗酒と、ニシンの半身、いか一夜干し、ゴボウのから上げを注文した。お店は雰囲気よし、味よし、価格よしだった。
締めの3軒は帯広の老舗バー「黒んぼ」に向った。この店は1956年創業の帯広では有名な店だが、「黒んぼ」という店の名前は現代では違和感を抱いた。3人は、それぞれ、マティーニ、ジンライム、ジントニック、マルガリータなどをオーダーした。テーブルには灰皿がおいてあったので喫煙は可能だ。私は、日常、煙草を吸ってはいないが、バーに行くと煙草を吸う。私の頭の中には「バーとたばこはセット」とのおかしなルールがあるのだ。お店のマスターにたばこがあるのかと聞いたら「買ってきますと」の事。暫くすると女性バーテンダーが『ピースライト』を買ってきてくれた。それぞれ2杯づつ飲んで店をでた。 3人で3軒をはしごしたのだが会計は一人8000円だった。私はKとYを帯広駅まで送った。二人は列車で十勝清水に帰るからだった。 改札口で二人を見送った。二人の後ろ姿は「今日も一日が終わった」ことを明確に示していた。私は二人の背中に「ありがとう。お疲れ様」と言った。 ホテルに戻りフロントで帯広市内の飲食店が載っている地図をもらった。その地図の「黒んぼ」には黒い線が引かれていた。私は、少し、複雑な気持ちになった。
翌日は富良野に向かった。バス停まで迎えにくれた地元のA社長と同行した東京農大のY教授と昼食を「小将」という居酒屋で食べ、Aさんから北海道林業の現状と造林について説明してもらい、14時過ぎからAさんの案内で富良野森林組合でのヒアリング調査に向かった。調査終了後ホテルにチェックインし、18:15にホテルに迎えに来てくれたAさんと出かけた。ホテルを出ると雪が舞っていた、舞っていたと言うよりはかなりの大雪だった。 しばらく歩くと今日の宴会場の『くまげら』という店に着いた。『くまげら』は富良野をギッシリ詰め込んだ居酒屋である。山賊なべ、クマ生姜焼き、行者にんにく醤油づけと酢味噌あえなどを注文したが、圧巻はこの店の日本酒だった。店の大将が大の日本酒好きで、日本中の酒蔵を回り3年間で800種を試飲し、富山、岐阜、岡山、広島などの内地の蔵元に「くまげらオリジナルに日本酒」を作ってもらい店にだしているのだ。提供されている日本酒は、いずれも、スッーと喉を通る淡麗辛口で口当たりがよい酒だった。 今回、同席したY教授とAさんは大の日本酒党だったので大いに盛り上がり、最後には、店のオーナーのMさんが吟醸酒をサービスしてくれた。オーナーの話では、オーナーは富良野在住の倉本総氏と親交があるらしく、倉本氏は現在も富良野に住んでいることだった。 2次会は、大雪の中を歩き「エデン」というスナックだった。大雪にも関わらず、お店はお客でかなり混んでいた。富良野人は酒飲みが多いのかなと心地よい酔いの中で思った。 |
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